成年後見人について調べてみると、お問い合わせで一番多いのは、親族からの「私が成年後見人になれますか?」というものだそうです。

※法律上、親族とは配偶者、6親等以内の血族および、3親等以内の姻族を全て親族と いいます。

成年後見人について、平成26年1月〜12月までのデータによると約35%のケースで本人の親族が後見人等に選任されています。

しかし、親族が後見人を希望しても、内容が複雑であったり、トラブルが予想される場合は、司法書士などの専門家が成年後見人等に選任されることもあります。

親族が後見人になれない理由として、大変悲しいことですが、後見人による財産の着服事件が多発していることがあげられます。

この下の数字、何の数字だと思われますか。

平成23年-311件-33億4000万円
平成24年-624件-48億1000万円
平成25年-662件-44億9000万円

 

裁判所が発見した、後見人に財産をかすめ取られていた被害の件数と金額だそうです。

平成25年度を見てみると、1件平均678万円!ということになります。

このような被害が多いことから、家庭裁判所は親族を成年後見人にすることに慎重で、申し立ては親族、なのに実際に成年後見人になるのは親族以外が選ばれるケースが多いようです。

各地の裁判所では本人におよそ1200万円以上の流動資産(預貯金、有価証券等(不動産は除く))※がある場合には、親族が後見人に立候補しても司法書士等の専門職を後見人に選任するか、もしくは後見制度支援信託を利用する運用にかわってきています。

※東京家裁では500万円以上、神戸家裁では1000万円以上としたとの報告もあり、各地の裁判所の判断による。

不正のリスクを減らすことが出来れば、他人である専門職よりも、親族が後見人になることが望ましいはずです。

「成年後見制度支援信託」という制度とは?

多額の流動資産がある、専門家が関与すべき特別の事務が予定されている場合など、一旦、専門職後見人を選任し、不動産の売却・相続手続などの比較的難しい後見事務を専門職後見人に行わせます。その上で、ご本人の流動資産を信託銀行に信託し、流動資産を固定(化)資産へ変換。その後、専門職後見人は親族後見人へ後見事務を引き継ぎ、辞任。

このようにすれば、親族後見人が管理する流動資産が減るため、不正のリスクが減少すると考えられて、近年、利用されるケースが増えています。

つまり、この成年後見制度支援信託が利用されれば、親族の方が後見人になることが出来ます。

参考)成年後見制度完全マニュアル

成年後見人。親族がなれるケースとなれないケース

【成年後見制度】親族ではなく他人を後見人にする悲しい理由