『ご本人は自宅で暮らし続けたい、けれどもさまざまな理由で老人ホームへの入居を勧めたい。どうしたらよいでしょうか。なんとかならないでしょうか』というご相談をよくいただきます。

例えば、離れて暮らしている娘さんからの『1人暮らしの父に介護施設への入居を進めているが、なかなか承諾してもらえない。すぐに駆けつけられず心配。どうしたらよいでしょうか』というご相談。

この他にも、『認知症が進み、自分からすすんで水分補給ができない。脱水症状を繰り返して病院への搬送を繰り返している方に老人ホームの入居をすすめたい』という担当ケアマネージャーさんからのご相談。

『よく外出されるが、自宅への帰り道がわからなくなることが増えた。自宅に帰ってこれず、たびたび警察に保護されている。ご本人はこのまま自宅で最後まで過ごしたいとの思いが強い。しかし、危険も伴う可能性もあるので、高齢者施設への入居先を探している』と地域包括支援センターからのご相談。

この他にも、『認知症が進み、排せつにサポートが必要になった母と同居している。ヘルパーなども利用しているが、介護疲れで限界を感じている。施設の見学にも行ったが、本人の拒否が強く困っている』というご相談もありました。

いろいろな状況と理由があります。

こんな時、どうやって施設への入居をおススメしているか。

まず、当然のことですが、その方に合う高齢者施設の見学していただくようお勧めしています。

特にご高齢の方は、“高齢者施設(介護施設)”というと、昔の“集団生活に重きを置く施設のイメージが強い”方もたくさんおられます。中にはご家族もそのようなマイナスイメージをお持ちの場合もあります。

このようなイメージを取り除くためにも、施設の見学をしていただけるよう働きかけます。今の高齢者施設は、全室個室で居室内に洗面、トイレ、エアコン、所によってはミニキッチンが設置されているところが多いです。バリアフリー設計で、過ごしやすく、かつプライバシーも守られています。

施設の見学をして、ここが安心できる空間であることを肌で感じて頂くこと、入居者さんや職員の様子を見て、ご本人やご家族の持つ施設のマイナスイメージをプラスのイメージに少しずつ変えていけるようにしています。また、食事は生活の楽しみの1つです。食事を施設内で調理し、出来たてを提供してくれる施設も多いです。できれば食事も試食していただくことで、プラスのイメージにつながることもあります。

さらに、施設の体験入居を体験していただくということもおすすめしています。

体験入居は、実施しているところとしていないところがありますが、空き室がある場合、1泊2日食事付きで施設での生活を体験することができます。見学するよりも職員の対応や施設の雰囲気、さらに夜間の様子も感じることができます。ここではどんな生活が送ることができるのだろうかと不安が大きい方には特におすすめです。

施設見学・体験入居をしていただくことで、マイナスイメージや不安が減ったと感じていただくことが多いように思いますが、中にはどうしても自宅で生活を続けたいという思いが強く、頑なに拒否される方もおられます。

しかし、ご本人の思いを尊重して今の暮らしを続けていると、命にかかわる危険性が高い場合もあります。一人暮らしで認知症が進んでおられる方の場合には特にこのようなケースが多いです。

ホームヘルパーやデイサービスなどを利用していておられても、24時間サポートすることが難しく、今までに命の危険にさらされることがあった場合。このような場合には、地域包括支援センターの方、ケアマネージャーの方、地域の方などとともに、積極的に関らせていただくこともあります。

本意ではないのですが、「ご自宅を改装しないといけないので、1か月だけ施設で暮らしていただけませんか」「大家さんの事情で今の家を取り壊すことになった。新しい部屋が見つかるまでの間、施設で生活していただけませんか」など、一旦今の家を出て暮らさざるを得ない状況であるとお伝えし、しぶしではありますが一時的に住まいを施設に移していただくこともあります。その後、慎重にご本人の様子を伺いながら、生活に問題がなさそうであれば、最終的には居住を移していただく場合もあります。

ご本人の思いを考えると非常に心苦しいことではありますが、命の大切さを一番に思うと最終手段として上記のような方法をとらざるを得ないケースも多いのが現状です。